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青山 高士; 小河 浩晃; 加藤 千明; 上野 文義
Metals, 11(3), p.511_1 - 511_13, 2021/03
被引用回数:3 パーセンタイル:25.78(Materials Science, Multidisciplinary)超高純度タイプ316ステンレス鋼の耐孔食性に及ぼすバルク溶液中のCuの影響を調べた。0.1M NaClでは孔食が発生しなかったが、0.1M NaCl-1mM CuClでは孔食が発生した。0.1M NaCl-1mM CuClでは電位域によらず表面へのCuの析出が生じたが、バルク溶液中のCuは不動態皮膜の形成に影響を与えなかった。0.1M NaCl-1mM CuClにおける耐孔食性の低下は、表面にCuまたはCu化合物が析出し、Cuが継続的に供給されていることに起因する。
富士 浩行*; 青木 聡; 石井 知洋*; 酒井 潤一*
材料と環境, 64(5), p.178 - 182, 2015/05
本研究は発銹の前駆過程である不働態皮膜の破壊に着目し、耐発銹性に及ぼす不働態皮膜の安定度の影響を明らかにすることを目的とした。12ヶ月間大気曝露試験を行った。不働態皮膜の安定度を比較するために、酸性塩化物水溶液中において電位衰退曲線測定および定電位分極試験を行った。その結果、オーステナイトステンレス鋼はフェライトステンレス鋼と比較して高い発銹面積率を示した。この序列は鋼種間の孔食電位や表面に存在する介在物の密度の序列と一致しなかった。それに対して、ステンレス鋼の耐発銹性と不働態皮膜の安定度の序列は一致した。オーステナイトステンレス鋼の耐発銹性がフェライトステンレス鋼よりも劣る要因として、不働態皮膜が塩化物によって破壊されやすく、不働態皮膜の破壊に伴い形成されたミクロピットが発銹の起点となり、発銹部の密度を高めていることが考えられる。
佐藤 芳幸*; 内田 宗範*; 河村 弘
JAERI-Conf 2004-006, p.203 - 209, 2004/03
BeTiの高温での酸化挙動を明らかにするため、空気中において、800C, 1000Cにおける24時間までの酸化実験を行った。熱間等方加圧法(HIP)製8mm200mmディスクを流量40cm/minの空気中で酸化させ熱天秤により酸化増量を測定し、生成した酸化膜の構造解析をX線回折,走査型電子顕微鏡(SEM)等で行った。その結果、BeTiの酸化増量はBe及びTiに比べて小さくブレークアウェイを起こさなかった。Ni基超合金をしのぐ耐酸化特性を示した。また、表面にはBeOだけからなる密な酸化皮膜生成しており、これが良好な耐酸化特性を示す理由と考えられた。Ti添加の及ぼすBeO皮膜安定化のメカニズムに着いて考察した。
涌井 隆*; 二川 正敏; 田辺 裕治*; 衛藤 基邦
日本機械学会論文集,A, 65(640), p.15 - 20, 1999/12
熱化学水素製造ISプロセスの硫酸濃縮・蒸発工程で使用可能な容器材料及び皮覆材料として期待されるセラミックス材料(Si-SiC,SiN)に対して、沸騰濃硫酸環境中腐食後の腐食表層部の力学特性を微小押込み試験及び有限要素法による接触解析から評価した。これより、微小押込み試験から得られる荷重/押込み深さ曲線には、両材料の腐食形態の差異が反映されることを確認した。さらに、実験的に評価された曲線を再現できるように、腐食層の材料定数を決定する逆解析により、腐食層の力学特性を推定できることを示した。
井岡 郁夫; 森 順二*; 加藤 千明; 二川 正敏; 小貫 薫
日本金属学会誌, 63(5), p.609 - 612, 1999/00
高シリコン鋳鉄は、硫酸中で良好な耐食性を示す。耐食性の発現機構を調べるため、沸騰硫酸下で生成したFe-Si合金の耐食皮膜の特性を調べた。試験片は、Fe-20%Si合金を用い、50%及び95%の沸騰硫酸に浸せきした。50%硫酸の皮膜表面は金属光沢を、95%硫酸では金属光沢のない黒褐色を示した。オージェ電子分光法により、皮膜の組成は50%硫酸ではSiとO、95%硫酸ではSi,O,Sから成ることがわかった。皮膜の生成速度は、95%硫酸の方が50%硫酸より一桁程度速かった。また、X線光電子分光法により50%硫酸の皮膜はSiOであり、95%硫酸の皮膜はSiOとSiOであることがわかった。95%硫酸の皮膜中のSは分子状のままで存在する硫酸分子のSへの還元反応により生成されたもの、被膜の生成速度の違いは被膜自体の緻密さによるものと考えられる。
二川 正敏; Steinbrech, R. W.*
Journal of the American Ceramic Society, 81(7), p.1819 - 1842, 1998/07
シリコン系セラミックスの高温耐食性は、酸化雰囲気中で形成されるシリカ皮膜の保護機能に支配される。高温耐食容器構造材料として着目されているSiSiCセラミックス上に形成された結晶質と非晶質の二層より成る二重構造シリカ皮膜の粘性特性を調べた。まず、シリカ膜を表面に形成した試験片を高温中で圧縮荷重をある一定時間負荷することにより、皮膜を介して接合した。この接合した試験片を用い、接合皮膜層にせん断荷重を負荷,保持し、その後のリラクセーション挙動よりシリカ皮膜の粘性特性を評価する方法を考案した。新たに考案した測定法により、920C1020C範囲でシリカ皮膜の粘性について調べた結果、不純物を含まないシリカガラスとアルミノシリカガラスとの中間的な値を示した。この値はシリカ皮膜中に含まれる不純物(Al,K)を考慮すれば、よく理解できることがわかった。
辻川 茂男*; 瀬尾 眞浩*; 杉本 克久*; 水流 徹*; 柴田 俊夫*; 山川 宏二*
PNC TJ1560 98-001, 164 Pages, 1998/02
これまで動燃事業団が実施してきたオーバーパックに関する研究成果についてレビューし評価を行ったのに引き続き、腐食防食協会の中に専門家による委員会を継続した。腐食科学の観点から、材料選定の考え方、実験方法、寿命評価手法など、より具体的な指針として役立てるべく、個別現象解析モデルの研究をおこなった。本書が、今後の研究開発の過程で利用され、オーバーパックに関する研究に役立つことを期待するものである。
木内 清; 平塚 健二; 遠山 晃*; 井手 久之*
Proc. of 5th Int. Nucl. Conf. on Recycling, Conditioning and Disposal (RECOD '98), 3, 8 Pages, 1998/00
湿式再処理施設の耐食安全裕度の向上や将来の高燃焼度燃料・MOX燃料に対応した再処理プロセスの高度化として、TRUやFPを含む高濃度の硝酸溶液を扱う機器用の耐食材料開発が重要となっている。再処理硝酸中の沸騰伝熱面腐食等の機構解析から、現用ステンレス鋼では過不動態腐食が、ZrやTi合金等の現用リフラクトリー金属材料では表面酸化皮膜の溶解度と再補修速度が、各々重要な耐久性支配因子であることが判明した。当該課題を解決するための材料対策として、前者では電子ビーム溶解-加工処理により無粒界腐食型としたステンレス鋼とCr、W、Siの複合添加により表面皮膜形成能を高めたNi基合金を、後者ではMO型表面皮膜を形成する高耐食性のNb-W合金を各々開発した。当該開発材の製造手法の最適化を図るとともに、実環境模擬の各種試験を実施して耐食性の改善効果を確認した。
川野辺 一則*; 大橋 和夫*; 竹内 正行; 武田 誠一郎
PNC TN8410 97-433, 49 Pages, 1997/12
(目的)硝酸溶液中に浸漬した非鉄金属材料(Ti, Ti-5Ta, Zr)の表面状態および酸化皮膜を調査する。(方法)3M硝酸およびCr添加3M硝酸溶液中にTi, Ti-5TaおよびZrを沸騰96時間浸漬し、SEMによる表面状態の観察およびXPSによる酸化皮膜の調査を行った。(結果)(1)3M硝酸およびCr添加3M硝酸溶液中に96時間浸漬したTi, Ti-5TaおよびZrの表面状態は、試験前の研磨痕が確認された。しかし、3M硝酸で行った試験のTi, Ti-5Ta表面は、若干腐食による肌荒れが認められた。(2)いずれの試験条件においても、Tiの酸化皮膜は、TiO, Ti-5Taの酸化皮膜は、TiOと若干のTaO, Zrの酸化皮膜は、ZrOであった。また、若干O-H結合の水酸化物が含まれていると考えられる。(3)いずれの試験条件においても、TiおよびTi-5Ta最表面酸化皮膜は、TiOとTiOで構成され、その割合は、TiOの方が多いことが分かった。(4)3M硝酸で行った試験のTiおよびTi-5Taの腐食速度は、Cr添加試験と比べて若干大きく、酸化皮膜の厚さは約800から900と推定される。また、Cr添加3M硝酸で行った試験の腐食速度は小さく、酸化皮膜の厚さも薄く約140と推定される。一方、Zrは、ほとんど腐食せず酸化皮膜の厚さは約220と推定される。(結論)3M硝酸で行った試験のTiおよびTi-5Taの表面状態は、腐食により若干肌荒れし、酸化皮膜は厚く成長することが分かった。Cr添加3M硝酸で行った試験のTiおよびTi-5Taの腐食速度は小さく、酸化皮膜は薄いことが分かった。Zrの酸化皮膜はいずれの試験においても、ZrOで優れた耐食性を示した。
辻川 茂男*; 瀬尾 眞浩*; 杉本 克久*; 水流 徹*; 柴田 俊夫*; 山川 宏二*
PNC TJ1560 97-001, 210 Pages, 1997/03
これまで動燃事業団が実施してきたオーバーパックに関する研究成果についてレビューし評価を行ったのに引き続き、腐食防食協会の中に専門家による委員会を継続した。腐食科学の観点から、材料選定の考え方、実験方法、寿命評価手法など、より具体的な指針として役立てるべく、個別現象解析モデルの研究をおこなった。本書が、今後の研究開発の過程で利用され、オーバーパックに関する研究に役立つことを期待するものである。
辻山 茂男*; 瀬尾 眞浩*; 杉本 克久*; 水流 徹*; 柴田 俊夫*; 山川 宏二*
PNC TJ1560 96-001, 147 Pages, 1996/03
これまで動燃事業団が実施してきたオーバーパックに関する研究成果についてレビューし評価を行ったのに引き続き、腐食防食協会の中に専門家による委員会を継続した。腐食科学の観点から、材料選定の考え方、実験方法、寿命評価手法など、より具体的な指針として役立てるべく、個別現象解析モデルの研究をおこなった。本書が、今後の研究開発の過程で利用され、オーバーパックに関する研究に役立つことを期待するものである。
坂入 正敏; 木内 清
JAERI-M 94-064, 20 Pages, 1994/03
放射線腐食性溶液中の金属材料の腐食現象を本質的に解明するには、その場解析手法の開発が不可欠である。既に前報において、溶液環境中における適用可能なその場解析の手段について、その原理、測定例及び問題点等の調査検討を行い報告した。我々の研究対象である原子炉水環境や再処理プラント硝酸環境の腐食では、ラマン分光法を用いたその場解析手法が最良な手法の一つであることが分かった。ラマン分光法を用いたその場解析装置の設計、製作を行い、測定対象とする数種類の溶液について予備試験を行った。この結果、当該手法により硝酸の溶液化学的性質がその場解析できること、イオン種によるラマンスペクトルの違いに知見が得られた。
河村 和広
PNC TN8600 92-001, 86 Pages, 1992/01
米国ブラウン大学化学部Aaron Wold教授の研究室で,噴霧熱分解法を用いシリコン板上に酸化ジルコニウム膜を付ける実験を行い,膜特性を評価した。噴霧熱分解法の特徴は超音波振動で原料溶液を霧化させるため原料の揮発性に関係無く炉内へ原料を供給でき,大気圧中比較的低温(500程度)で熱分解させることができるとともに緻密で良好な特性を持った各種の膜を作製できることである。本研究では,原料溶液としてジルコニウムアセチルアセトネートのエチルアルコール溶液を使用し,熱分解後シリコン板上で成長した非晶質膜を酸素中で焼成(800)し,結晶化させた。膜付け,焼成のプロセスを繰り返すことにより厚膜を作製した。原料中の不純物問題,均一な膜付けのための最適条件探し,膜の割れ問題,原料供給部の管閉塞など数々の問題を解決し,最高3mの膜割れの無い均質な膜を作製できた。一年間の研究生活を通して習得した事項としては,1徹底した再現性の確認,2一歩一歩研究を進めていくやりかた,3産業界のニーズをとらえた研究テーマの選定,4論文化を念頭においた実験の進め方,5研究・発表の指導法,6研究コストの認識などがあげられる。材料製造技術としては,膜付け技術を習得することによりバルク材料に無い耐熱性,耐食性をもった材料の開発,廃棄物処理法への適用などを検討できるようになり,幅広い技術分野を見渡せるようになった。また二次出張(米国原子力学会,米国材料学会)では,アクチニド回収・核変換技術開発,処分技術開発の現状を知ることができた。米国で生活して米国を内側から知れただけでなく,日本についても再認識できた。また同じ研究室にいた中国人,韓国人と接することでアジアを知るきっかけともなった。これらの経験を今後の研究開発,生活に生かしていきたいと思う。
倉田 有司; 近藤 達男
JAERI-M 85-053, 36 Pages, 1985/04
酸化初期の造膜反応と浸炭の関係に注目して、高温ガス炉用Ni基耐熱合金のヘリウム中腐食挙動に及ぼす昇音速度の影響を調べた。試験はホウ素(B)含有量の異る2種類のハステロイXRと中間熱交換器伝熱管用に開発された113MAおよびKSN合金を対象とした。試験温度までの昇音速度を80C/minと2C/minの2種類とし、900Cで高温ガス炉一次冷却系を近似した原研B型ヘリウム中での腐食試験を行った。40ppmBを含むハステロイXR、113MA、KSNの耐酸化性は昇温速度の違いによりほとんど変化しなかったが、2.8ppmBを含むハステロイXRの耐酸化性は昇温速度により変化した。脱浸炭挙動は昇温速度の違いにより明らかな相違が認められた。昇温速度が速い場合には初期に著しい浸炭が起ったが、昇温速度が遅い場合、浸炭はわずかであり、高温ガス炉雰囲気での浸炭への初期酸化の役割が明らかになった。
木内 清; 下平 三郎*
JAERI-M 83-137, 26 Pages, 1983/09
軽水炉一次冷却系での配管割れを始めとして、ステンレス鋼の応力腐食割れは数多く経験されている。機構的にみると水素脆性主導型でない限り不働態皮膜が重要な役割を持っているといわれているが、両者の関係を明らかにした報告は数少ない。本報では、23Cr合金をもとにしてNiを添加したステンレス鋼について、塩化物を含む溶液中の耐応力腐食割れ性と不働態皮膜の性質との関係を、ESCA/AUGER表面分析機器を用いて調べた。解析の結果、低Niフェライト合金では、不働態被膜の保護性、再不倒態化速度と耐応力腐食割れ性との間に明瞭な相関関係があることが判った。より高Niの複相ステンレス鋼および第一ステナイトステンレス鋼についても不働態皮膜の性質を基にNi含有量と耐応力腐食割れ性との関係を明らかにすることができた。また応力腐食割れにおける各種合金元素や溶存陽イオンの役割について考察し、造膜挙動との関連性を明らかにした。
幕内 恵三; 片貝 秋雄; 中山 博之*
Journal of Coatings Technology, 55(698), p.29 - 37, 1983/00
自己硬化性のモノマーであるN-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド(NBM)の共重合体ラテックスを、放射線による半連続重合法により合成した。粒子構造とラテックスのコロイド的性質、硬化フィルム物性を検討し、芯部が橋かけし、皮部が低分子ポリマーから成る粒子のラテックが、最もバランスのとれた物性を示すことが明らかとなった。NBMは芯部には平用で、皮部のNBMだけで十分な自己硬化性を示した。皮膜光沢はスチレンの使用で向上した。芯部橋かけの効果は、耐久性にあらわれた重合プロセス上の因子として、モノマー供給速度と乳化剤の分割について検討した結果、これらの因子によりラテックスのコロイド的性質や皮膜物性が強く影響されることが判った。モノマー供給速度は0.66%/分、乳化剤は半量モノマーに溶解する方法で、バランスのとれたラテックスが保たれた。
木内 清; 近藤 達男
日本金属学会誌, 47(6), p.494 - 501, 1983/00
プラズマと接する核融合炉第一壁構造材料は、プラズマのエネルギー損失を少なくする為に、出来る限り表面からの粒子の放出を抑える事が必要である。粒子の放出にはいくつかの過程があるが最も重要なものは、スパッタリングである。純金属の物理スパッタリングは、よく研究されているが、酸化の影響を考慮したこの種の研究は比較的小ない。本報では、いくつかの条件で予備酸化したMo表面についてアルゴンイオンによるスパッタリングを行い、2次陽イオンの示性定量分析法を用いて酸化の影響を調べた。この結果、金属およびMoO表面のスパッタリングは、ほぼ物理スパッタリングのモデルから想定される傾向を示すが、MoO表面では、スパッタリング収率が一次イオン密度や時間に依存して変化し、見かけ上2ケタ以上異なる2つのスパッタリング収率を示した。これはMoOが気性酸化物であるため、スパッタリング速度により(MoO)n型の結合の弱い吸着層とMoO固相の2つの表面状態をとるためと分った。
幕内 恵三; 片貝 秋雄; 萩原 幸
色材協會誌, 56(9), p.575 - 581, 1983/00
N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド(NBM)共重合体ラテックスの硬化温度を低くする目的で、種々の強酸性モノマーの放射線乳化共重合を検討した。強酸性モノマーとしては、リン酸基を有するアシッドホスホオキシエチルメタクリレート及び3-クロロ、2-アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、スルホン酸基を有する2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びP-スチレンスルホン酸ナトリウムを用いた。120C硬化塗膜の機械的性質は、強酸性モノマーを用いないもの、60C硬化塗膜と同等の性能を示し、低温硬化が可能であることを示した。しかし、塗膜の耐水性は劣り、改善の必要性があった。
木内 清; 辻 宏和; 近藤 達男
JAERI-M 8786, 19 Pages, 1980/03
BWR系軽水炉では、溶接熱影響部で生じるオーステナイトステンレス鋼のIGSCCが最も重要な問題であり、多くの対策が検討されて来た。抜本的な解決法は、合金改良によりIGSCCを生じない材料を作ることである。このために低炭素、N添加の材料が試作されているが、合金の組成を考えた場合、設計コード等のデータベースの確立など実用化迄にかなりの日時と経費を要する。本報の手段は、合金組成は全く変えずに加工熱処理のみにより同様な効果を得ようとするものである。この手段は、完全に溶体化処理した素材に十分な加工を加えた後、まず再結晶温度以下の時効温度で十分析出を完了させ、さらにより高温で再結晶を行う方法である。この方法により生じた粒界は、析出物と無関係に存在し、鋭数化処理を施しても粒界SCC感受性を生じないことが分った。IGSCC感受性については、Strauss始め、多くの評価手段を用いて無処理剤と加工熱処理材との対比試験を行ない、最適条件の加工熱処理法を得た。
幕内 恵三; 高木 徹*; 荒木 邦夫
色材協會誌, 51(4), p.214 - 218, 1978/04
耐水性の良好な皮膜を形成するエマルションの合成法に対する放射線利用の可能性を検討した。ポリアクリル酸エチルを線および通常の触媒を用いて乳化重合し、得られたエマルションの重合安定性と皮膜の吸水率を比較した結果、次のことがらが明らかとなった。(1)放射線法では、触媒法よりも少量の乳化剤で安定に重合する。(2)放射線法では、強い吸水因子である触媒が不要であるため、皮膜の耐水性は触媒法に比べて著しく良好である。(3)触媒法のエマルションに放射線を照射すると、皮膜の耐水性が向上する。これは、放射線によってエマルション粒子中のポリマーが橋かけするためである。